こんにゃちは、猫月です🐱
今日は、運動会や発表会などの“練習”についてお話ししようと思います

猫さんは、運動会の計画とか練習ってどうしてますか
やっぱり4月からとか、早めに計画して、
保育に導入してるんですか?

運動会の計画なぁ…あんま考えてない(笑)
子どもにとっては、1/365日だからね
行事の日も、普段の登園した日も

え?!計画して保育を進めてるんじゃないんですか?
だって、運動会ですよ?
保護者もたくさんいらっしゃるし……

保護者に見てもらいたいのは、それこそ普段の子どもたちの姿じゃん
行事の日だけの“特別な姿”を見せても、
それは成長とはちょっとズレると思うんだよ
運動会や発表会など、保護者が来園する行事は、
その数ヶ月前から悩ましい思いをする保育士は少なくないと思います
「見せる行事には“練習”が必要」だと思いますよね
ダンスを覚えて
並ぶ場所を覚えて
競技や演技の内容を覚える
本番で子どもたちが困らないように、何度もくり返しておく
……本当に、それは当たり前なのでしょうか?🤔
今回は、ほとんど“練習”をせずに迎えた、
ある3歳児クラスの運動会をご紹介します
先にお伝えしておくと、
これは3歳児クラスの一年間の保育の推移です
タイトルにあるお寿司屋さんごっこも、運動遊びも、
運動会のために始めたものではありません
それぞれが別々に進み、
ときには重なりながら、
毎日の保育の中で続いていました
そこで今回は、いくつもの遊びが同時に走っていた一年間から、
運動会をクローズアップして振り返ってみようと思います
4月に目指したのは、「好き」のある環境
その3歳児クラスには、4月に3人の新入園児が加わりました
その中に、好奇心旺盛なKちゃんがいました
気になるものを見つけると、
保育室から飛び出して行ってしまうこともあります
担任としては、Kちゃんが落ち着いて過ごせる保育室にしたい
だからといって、Kちゃんだけに響く保育をするわけにもいきません
クラスには、ほかにも大勢の子どもたちがいますからね
そこで探したのが、
Kちゃんを含めたクラス全体が楽しめる“最小公倍数”でした
それが、回転寿司です🍣
子どもたちから、家族と回転寿司へ行った話は、そこかしこから聞かれていました
なかでもKちゃんは、お寿司が大好き
まずは、ままごとのコーナーに和風の小皿と、
フェルトで作られたお寿司を用意しました
それが、お寿司屋さんごっこの始まりです
しばらくすると、子どもたちは粘土でもお寿司を作るようになりました
新たに用意したお寿司カードでは、
オリジナルの簡単なルールから、
神経衰弱も楽しめるようになりました
運動会後には、ほかのクラスを招いてのお店ごっこへ
そのときには、私がベルトレーンを設け、
お寿司の皿が動く回転寿司にもなりました
さらに冬には、親子で楽しむ機会にもつながっていきます
お寿司屋さんごっこは、運動会の出し物として始まったのではありません
4月から3月まで、形を変えながら一年間楽しんできた、クラスの遊びだったのです
転びやすい子たち──体幹が育つ環境を目指して
お寿司屋さんごっこと並行して、別の遊びも進行していました
クラスの子どもたち全体の姿を見ながら、
担任間で課題として捉えていたのが、体幹の弱さです
特に、低い姿勢を維持するのが難しい
転んだ際に、とっさに手をつけない子も散見されていました
それなら、日常の遊びの中で、
自然と手をついたり、這ったりする動作を経験できないだろうか
そんな視点で環境を整えていきました
まず取り入れたのは、よじ登りです
園庭に、マットをかぶせた台を設けました
台によじ登るには、まず上面に手を置かなければなりません
さらに、自分の身体を引き上げるときには、手や腕に体重をかける必要があります
「手をつきなさい」と言わなくても、手をつく動作が自然に生まれます
高さは、子どもが簡単に飛び乗れない程度
それでいて、落下による大きな事故につながらないように調整しました
それと合わせて、タイヤも並べて置いてみました
不安定なタイヤの上を、手足をついて這うように移動してほしい
そんな意図があったのですが──
低い姿勢がまだ身についていない子どもたちは、タイヤの上でも立って歩こうとします😅
対策として、タイガーバーなどを設けて、屈まなければ通れないようにする方法もあります
ただ、子どもがバーを跨ごうとすると、かえって危険につながるかもしれません
そこで私は、四つん這いになってタイヤで遊んでみせました
ただし、「こうやって、四つん這いで進むんだよ」なんて言っても面白くありません
私がタイヤの上を四つ這いで進んで遊んでいると、子どもたちが集まってきます
「何してるの?」と興味を持った時が好機です
🐱スパイダーマンだよ、知ってるでしょ?
すると、ヒーロー好きな子がすぐに模倣を始めました
誰かが始めれば、その子と仲の良い子も遊びだします
そこから、ほかの子どもたちも、手足を使ってタイヤの上を移動するようになります
子どもたちは体幹を鍛えているわけでも、低い姿勢を練習しているわけでもありません
スパイダーマンになって遊んでいるだけです
さらに低い姿勢──腹ばいも経験できるようにしたい
そこで、大きなオーガンジーの布があったので、網くぐりのように遊べる環境にしました
ただ、3歳児が自分で布をたくし上げて潜り込むのは難しい
四隅を低いパイロンと結んで、子どもが入りやすいように口を開けました
いつものトンネルとは違う新鮮さがありますし、
オーガンジーの透け感も子どもたちの興味を引きます
こうして、よじ登る、手をつく、這う、潜るといった動きを、
日常の遊びの中でくり返し経験していきました
運動遊びを、どう見せよう?
さて、しばらくして担任間で、
「運動会は、どうしようか?」
という話になりました
春から楽しんできた運動遊びを組み合わせれば、競技として構成することはできます
台によじ登って、飛び降りる
オーガンジーの下を、腹ばいになって進む
リバーランドスケイプを、ジャンプして渡る
子どもたちが身につけてきた動きを、保護者に見てもらうことはできるでしょう
でも、それだけでは子どもたちに“やらされ感”が生まれてしまう
発達を見せたいと思っているのは、保育士だけです
子どもたちは、
「春から身につけた運動能力を、お家の人に披露したい!」
と思って遊んできたわけではありませんからね
だったら、子どもたち自身が遊びたくなる物語が欲しい
ここで、別々に走っていた遊びが重なりました
そうだ!
お寿司屋さんと組み合わせたらどう?🍣
お寿司屋さんごっことは別に、子どもたちは魚釣り遊びも楽しんでいました
そこで生まれたのが、
“板前が、自分で魚を獲ってくるお寿司屋さん”です
▶️ 「リバーランドスケイプ」は、バランスの育つ遊具です
ようこそ!魚を獲ってくるお寿司屋さんへ
迎えた運動会当日
子どもたちは座席から出てくると、私の左右に並びました
「お家の人に顔が見えるように並んでね」
伝えたのは、それだけです
そして、私の口上が始まります
🐱ようこそ、いらっしゃいました!
ここは、板前が自分で獲ってきた魚を握る寿司屋でございます!
まずは、魚を獲るところをご覧いただきます!
子どもたちは岩場(マットを被せた台)へ並びます
「さぁ、魚を獲りに行こう!」
一人ずつ岩によじ登り、海へダイブ!
続いて、オーガンジーの下を腹ばいになって素潜りします
リバーランドスケープは、浅瀬の岩場
落ちないように、ジャンプしながら渡っていきます
岩場を越えた先で待っているのは、魚釣りです
子どもたちは魚を釣り上げると、保護者に向かってポーズ!
全員が釣り終わったら、今度はみんなで釣果をアピールします。
(子どもたちがお家の人に魚を見せている間に、保育士は後ろで運動遊具を片づけます)
そして、
🐱さぁ!お寿司を握るよ!
釣った魚を魚籠へ入れたら、子どもたちは並び、
『おすしやさんたらおすしやさん』を踊ります
最後は、
もっとおいしいお寿司を握るために、修行するぞー!
と、元気に退場
こうして、子どもたちが日常的に楽しんできた
運動遊びと、お寿司屋さんごっこ、魚釣りが、
一つび運動会プログラムとしてまとまりました👏
「練習しなかった」は、何もしなかったわけじゃない
お寿司のダンスは、運動会のために覚えたものではありません
お寿司が好きな子どもたちですから、
『エビカニクス』や『おどるんようび』などと同じように、日頃から踊って遊んでいました
入退場も、決められた隊形はありません
座席からそのまま出てきて、
「お家の人に顔が見えるように並んでね」
と伝えるだけです
競技の並び順も、子どもたちに覚えさせませんでした
大人がそれとなく整えれば済むことです
くり返し遊んでいるうちに、子ども自身も「隣は◯◯ちゃん」と覚えていきますしね
もちろん、当日は順番を間違えた子もいましたが、
そのくらいは私の台詞でどうとでもなります
子どもを正しい場所へ戻すのではなく、
その子が今いる場所から物語が続くように演出すれば済むことです
保育士が正せば「うちの子、間違えたんだ……」と気づくでしょうが、
競技がそのまま続いていけば、
子どもが間違えたかどうかなんて、保護者は知らないことですしね
子どもが台本に合わせるのではなく、台本を子どもに合わせるのです
とはいえ、当日まで何もしなかったわけではありません
週に2〜3回ほど、運動会の場所で遊ぶ機会は設けました
これを“練習”と呼ぶなら、練習なのかもしれません
でも、目的は完成度を高めることではなく、
場所の雰囲気や競技の流れに慣れることです
並ぶ位置を細かく指示したり、間違えた動きを直したり、
全員が同じようにできるまでくり返したりはしていません
やり過ぎたら、子どもたちは飽きてしまいますからね
運動会まで意欲を維持することよりも、
運動会が終わったあとも遊び続けたくなることの方が、私たちには大切でした
子どもを仕上げず、環境と演出を整える
練習をくり返し、子どもたちに並び順や動きを覚えてもらえれば、当日の進行は楽になります
保育士は、決められた台詞を読み上げれば済むでしょう
でも、子どもに覚えさせることに頭を悩ませるより、
保育士は一人ひとりの行動を見守って対応していく方が、
楽しい時間になる、と私は考えました
違う方向へ進んだ子がいれば、台詞を変える
止まった子がいれば、その姿を受け止めながら物語をつなぐ
予定とは違うことが起きても、それを“間違い”にしない
練習を省いて楽をしたのではありません
負担の置き場所を、子どもから保育士へ移したのです
子どもがどう動いても遊びが続く、環境と演出への意識でした
運動会が終わっても、遊びは終わらない
運動会後も、運動遊びは年間を通して続きました
子どもたちの育ちに合わせて、少しずつ強度や内容を変えていきます
オーガンジーの下に低い障害物を置き、
姿勢や身体の向きを変えながら進めるようにする
台から飛び降りる場所にはラバーリングを並べ、
子ども自身が跳びたい距離を選べるようにする
同じ遊びでも、環境が変われば身体の使い方は変わります
一律に同じ目標に挑むのではなく、
子どもが自分で挑戦の幅を選べるようにしました
お寿司屋さんごっこも、運動会では終わりません
上述のように、ほかのクラスを招いたお店ごっこへ発展し、
冬には親子でも楽しみました
Kちゃんも、運動会ではほかの子どもたちと同じように参加していました
運動会前から、家庭でも、
「運動会で、お寿司屋さんをやるんだ」
と楽しそうに話していたそうです
保護者にも、遊びの意味や保育士の狙いは、その都度伝えてきました
だからこそ、当日の完成度だけではなく、
前年からの子どもたちの成長を感じてもらえたのだと思います
運動会当日に突然、立派な姿を見せて驚かせる必要はありません
子どもがどのように遊び、何を経験し、どんな力を身につけてきたのか
私は、そのナラティブ(物語)こそが重要だと考えています
本当に見せたいのは、運動会当日までの“メイキング”です
そこにこそ、子どもの成長が見られますしね
その過程を保護者と共有していれば、
当日に少しくらい間違えたって、大した問題ではないのです
🎯「練習のない運動会」は可能か?
ここまで読んで、
「運動会のこと“あんま考えてない”?めちゃくちゃ考えてるじゃん」
と思った方もいるでしょうか
もちろん、何も考えていないわけではありません
私が考えていたのは、いつだって子どもが成長できる環境についてです
だから、運動会から逆算して、子どもたちに練習をさせる必要はありませんでした
日々の子どもの姿を見て環境を整えていけば、
その積み重ねから運動会を構成できるからです
さて、
「練習のない運動会は可能か?」
という問いに戻りましょう
私は、可能だと考えています
ただし、何の積み重ねも必要ないという意味ではありません
運動会のためだけの練習がなかった代わりに、
そこには春から続いてきた、たくさんの遊びがありました
運動会に必要な動きを教えたのではありません
日々遊んできた動きに、一つの物語を重ねたのです
保育士から見れば、発達に見合った運動遊び
子どもたちから見れば、板前になって魚を獲りに行く、お寿司屋さんごっこ
同じ活動の中で、二つの物語が同時に走っていました
大切なのは、この運動会を見て、
「よし、うちのクラスもお寿司屋さんにしよう!」
と考えることではありません(笑)
目の前の子どもたちは、今、何を楽しんでいるのか
日々の遊びの中で、どんな身体の動きを経験しているのか
それぞれの遊びが重なるところに、どんな物語が生まれるのか
運動会の内容を決めて、そこへ子どもたちを近づけるのではなく、
子どもたちがすでに歩いている道の上へ、運動会を置いてみる
そうすれば、運動会のためだけの練習は、必要なくなるのかもしれません
あの日、子どもたちは運動会のために練習した成果を披露したわけではなく、
ただ、いつもの遊びの続きを、家族の前で楽しんでいました
運動会の日も、子どもたちにとっては、遊びの途中だったのです
▶️ 行事で悩んだら、大豆生田先生の本を参考にしてはいかがでしょうか

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