なんだろう?“保育所保育指針” 【保育の目標】

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なんだろう?保育所保育指針

こんにゃちは🐈、猫月だんくるおすてうすです。

今回は、保育園を利用している子どもたち、その保護者、
また働く保育者に関わる重要なもの
“保育所保育指針”についてお話ししていきます。

保護者の方の中には、
「“保育所保育指針”って、何?😲」
と思う方もいらっしゃるかも知れません。

保育士も、保護者に保育所保育指針について
保護者や子どもたちに説明する機会は、
なかなか無いのが現状だと思います。
ということで、保育所保育指針の内容について触れつつ
私はどう保育を心懸けているかについて
お話ししていきたいと思っております。

以前、保育所保育指針の
総則「1:保育所保育に関する基本原則(1)保育所の役割」
の記事を書いておりますので、
こちらも併せて読んでいただけるとありがたいです🙏

今回は、
第1章 総則
 1:保育所保育に関する基本原則
 (2)保育の目標
についてお話ししていきます。

▶保育の目標

 まず、保育所保育指針(以下、保育指針)ではどのように記載されているかをご紹介します。

(2)保育の目標
 保育所は、子どもが生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごす場である。 このため、 保育所の保育は、子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うために、次の目標を目指して行わなければならない。
(ア) 十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を満たし、 生命の保持及び情緒の安定を図ること。
(イ) 健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。
(ウ) 人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと。
(エ) 生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培うこと。
(オ) 生活の中で、 言葉への興味や関心を育て、話したり、聞いたり、 相手の話を理解しようとするなど、 言葉の豊かさを養うこと。
(カ) 様々な体験を通して、豊かな感性や表現力を育み、 創造性の芽生えを培うこと。
 保育所は、入所する子どもの保護者に対し、その意向を受け止め、子どもと保護者の安定した関係に配慮し、保育所の特性や保育士等の専門性を生かして、その援助に当たらなければならない。

保育所保育指針 第1章総則(2)保育の目標

保育園では具体的に何をするのか、
どんなことを目的とするのか。
それを6つの項目で
具体的な保育園の役割を明確にしているのが
「保育の目標」です。

6つの項目とは、
養護である「生命の保持及び情緒の安定」
それと教育である「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」で示されています。
ちなみに、教育にあたる「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」を”5領域”と呼びます。

概要の説明なので、言葉が固いのはご愛敬でお願いしまーす🙏

▶生命の保持及び情緒の安定

保育の二本柱は、“養護”と“教育”です。
その一つである“養護”は、
さらに「生命の保持」「情緒の安定」に大別されます。
噛み砕くと、
「子どもの健康と安全を守ること」
「子どもの心の安定を図ること」
だと考えていただければと思います。
身体と心の安心・安全を保障することが、養護の目的です。

「子どもの健康と安全を守ること」というのは、
大人が子どもを守るということとはちょっと異なります。
昨今、子どもが保育園で怪我をすると、
保護者も不安になり、苦言をいただくことが増えてきました。
その背景にあるのは、当然親としての愛情がある、という面は承知しております。
その一方で、子どもは将来的に自立しなければなりません
こう言っては何ですが、子どもはいずれ親元から巣立ちます。
自分で生きていく力を身につけなければならない
大人に守られて怪我を防いでもらうのでは、
自分で危険から回避する能力が育まれるのは難しいでしょう。
「転ばせない」環境よりも、
「転んでも怪我を避けられる」力を身につけることの方が、
将来的な子どもの能力としては重要です。

相田みつをさんの詩に「受け身」というのがあります。
(引用するにはちょっと長いので割愛します。検索していただければすぐに出てくると思います)
相田さんが伝えたいことの本質とは少々ずれると思いますが、
「受け身」というのは、投げ飛ばされても怪我をしないための練習です。
こう言っては何ですが、地味で苦しい練習です。
ですが、受け身が取れないと、大怪我に繋がります。
それこそ武道では、命を失うことすらあり得る

子どもは日々の生活の中で、いろいろな怪我をし、
そして自分の身を守るすべを経験の中で獲得していきます。

これは、大人が言葉でいくら示しても、理解するのは困難です。
実際に転び、怪我をし、痛みを知ることで、
その危険から回避する方法を身につけていく。
ちょっと前は、転んでも手を出さない子が増えている
という話がありました。
最近はそれよりも悪化し、
目を閉じることすらしない子が増えていると聞きます😱
「子どもの健康と安全を守ること」には、
そういった危機管理能力を身につけるという
将来の大きな目的があると、保護者にもご理解していただきたいです。

「子どもの心の安定を図ること」には、
昨今話題になる「心理的安全性」と想定していただければと思います。
大人ですら、
安心して発言や行動ができる職場環境にあることで、
パフォーマンスの高い業務推進が成せることが
はっきりしてきています。
幼い子どもたちであれば、
より自分の行動や発想が認められる環境で生活できることが、
その発達に重要なことだと、理解してもらえるところでしょう。

子どもの、あるがままの姿、発想や思考、行動などを、受容し共感することで、
保育士との信頼関係が築かれ、心の安定が成されていきます。
何より、その子の“主体性”というか“能動性”をどれだけ受容し、抱擁できるかというのは、
保育士が実践していくスキルです。

“愛情を伝えるには、技術がいる”とは
アドラー心理学の講師の言葉ですが、
スキルである以上は
誰でも獲得し、行使できる物ですので、
そこは研鑽に努めていきましょう。

▶健康

養護の中にも「健康と安全」という文言がありましたが、
その獲得のためにより実践的な内容を検討し、
子どもたちが獲得できる環境を整えていくのが
「健康」という領域になります。
例えば、子どもの現在の姿を考慮して、
運動遊びを展開したり、衛生に関する知識や技術(例えば、手洗いとうがい、着替えなど)を
身につけてもらうことなどです。
食事や午睡など、
心身の発達に重要な生活リズムを整えることも、この領域に含まれるので、
保護者との連絡や連携も十分に考慮していく必要があります。

当り前ですが、特に生活のほとんどは家庭で行うことですので、
保護者に重要性を理解してもらうことや、
ポジティブに取り組んでもらえる支援が大事になってきます。
例えば、体操教室のある保育園・幼稚園の子どもほど運動神経の発達が遅れるとか、
睡眠リズムの乱れが思春期以降に跳ね返ってくることなどは、
この時期に提供しておきたい情報ですね🙆
中高生の不登校の原因の多くが、
乳幼児期の睡眠リズムの乱れから来る自律神経失調とかあまり知られていませんから、
そういう情報を保育士も承知し、
保護者へ伝達することは大事です。

▶人間関係

言葉のまま、人との関わりに関する領域です。
友だちや周囲の大人とのコミュニケーションを取り、
自立心や行動の自律する力を養う領域です。

孫子の格言に「彼を知り己を知れば百戦殆からず」というものがありますが、
“自分を知る”ということは社会性においてとても重要なことです。

自分がどんな人間であるか、自分でできることとできないことを承知する。
承知した上で、人に助けてもらうこと人の役に立てることが分かってきます。
そして、それを実行できることが“社会性”です。

こんな例え話があります。

在る所に弓矢の名手がいた。
だが自分で弓を作ることが苦手だったため、
彼は腕を発揮できずに飢えていた。
在る所に弓作りの名手がいた。
だが自分で弓を射ることは苦手だったため、
彼は狩りができずに飢えていた。
弓矢の名手は、弓作りの名手に弓を作ってもらい、
弓作りの名手は、弓矢の名手に弓を提供することで、
二人とも豊かに暮らすことができるようになった。

これが、“社会的”に生きるということです。

人は、一人で生きていくことはできません。
この例え話では二人しか登場しませんが、
弓作りのために材木など素材を調達する人もいるでしょうし、
狩った獲物を調理する人もいるでしょう。
現代の私たちも同じです。
素材を調達し、加工し、運搬し、販売してくれる人がいるから、私たちは生活ができている。

私とあなたがいるから、生活が豊かになっている。

「友だちと遊ぶことは楽しい」を十分に経験し、
その関係性の幅を広げていくことが、
子どもの発達には大事なのです。
「子どもは、子どもたちの中で育つ」とは
インクルーシブ保育の先駆者である野島智恵子先生の言葉ですが、
私はこの言葉を常に念頭に置きながら
保育を考えるようにしています。

▶環境

子どもの自身を取り巻く環境に、
興味や関心を抱き、関わりを持つ領域です。
“環境”と聞くと、自然や生活環境などを想像されるかも知れませんが、
身近な人も環境に含まれます。
そういった意味では、人間関係とリンクする部分もあります。
物の性質や特性、文字、数量なども環境に含まれます。
生活を送っていく上で関わる物事すべてが環境である、と考えていただければと思います。
そして、子どもが自分の好奇心のままに、
環境と能動的に関われる環境を保障することが、
保育には望まれます。

「知らない方が良いものなど無い。ただし、適切な扱い方と併せて獲得する必要はある」

危険な物から子どもを遠ざけがちですが、
必要なことは「どうしたら安全に扱えるか」「どう扱ったら危ないか」を理解することです。
子どもの成長に重要なのは、
大人にコントロールされることではなく、
自分で判断できること。
それが自立であり、自律するということです。
大人がいなくても、安全と危険を判断する、分別がつく
そう子どもが育つためには、
どういう環境設定をするのか、
大人の経験と知恵が求められますね。

▶言葉

言葉というのは、自分の思いを十分に表現するという領域です。
「目は口ほどに物を言う」という例えがありますが、
言語だけで思いを表現するのは難しいことです。
相手に思いを伝えるには、全身を使うものだと理解しておくことが大事でしょう。

実際、乳児であれば表情や声、鳴くことなどで相手に要求を表現しますよね。
大人だって、言語だけでなく身振り手振りで相手に伝達します。
「はい、泣かない泣かない」とか
「叩かないで、言葉で言って!」というのは、
大人からの無茶な要求です。
言語だけで伝達ができるなら、
そもそも人間関係で苦悩する人なんていないでしょう?
大人こそ「言葉だけでは伝わらない」ことを体感しているはずです。

全身を使って、自分の思いを表現する。
その自分の思いを、十分に受け止めてもらう。
そして、思いを聞いてもらう経験を重ねる中で、相手にも思いがあることを知る。
だから、相手の話も聞こうとする。

コミュニケーションツールを獲得するために、子どもにどんな経験をしてもらうか。
それが、“言葉”という領域になります。

▶表現

感性と表現に関する領域です。
自分の周りにある“世界”を十分に堪能し、
その感動を思うがままに表すことが“表現”です。
表現というと、言葉にすることや制作活動と捉えることが多いですが、
それは表現するための手段の一部に過ぎません。
絵にする、音にする、言葉にする。
子どもが思いのままに、
自分の思いや感動を表現するための手段が得られるように、
様々な手段を経験していくのです。

視覚的にすることで表現する子もいれば、
オノマトペで表現する子もいるでしょう。
画一的に同じ方法で表現する必要はないです。
ただ、”思い”という目に見えないものを表現するためにはどうするか。
それを、子ども自身が考えられるように、
絵や制作や音楽などを経験することが大事なんですね。

モーツァルトがいかにピアノの天才でも、
「あなたの感性を絵に表しなさい」と限定されたら、彼の才能は発揮されなかったでしょう。
たまに、レオナルドやガリレオみたいな多種多様な分野での才の持ち主もいますけれど😅
保育では、子どもに手段を押しつけることなく、
しかし好奇心を十分に発揮しながら、
自分の思いを表現する手段を獲得していくことが大事です。

▶6つの項目とはいうけれど

便宜上、保育の目標は6つの項目に分けられています。
ですが、実際はすべての項目はリンクしていて、かつ重複する部分も多いです。
運動遊びは“健康”の領域に含まれますが、
子どもたちの遊びの場は“環境”ですし、
友だちと遊ぶ中で“人間関係”も育てば、
“言葉”“表現”も発揮されます。

よくゲームだとパラメーターで視覚化されますけど(パワプロ⚾とか、ウイイレ⚽とか)😄
一つの活動で特定の何かが伸びることを目指すというよりも、
遊びなどを経験する中で、
「その子の何が伸びたのか」
「伸びつつあるのか」を見る。
そして、その今の姿を見て、
「次にどんな経験をしたら、よりその子の発達が促されるだろうか」を考えていく。

砂遊び一つをとっても、
「砂を握りしめる」(健康)
「砂の感触を知る」(環境)
「砂に触れた楽しさを伝える」(人間関係、言葉、表現)
などのたくさんの経験と思考が、
毎時、毎分、毎秒繰り広げられています。

表情に表すのだって、
人間関係でもあり、言葉でもあり、表現でもあり、
表情筋を動かすという意味では健康でもあります。

まー、事細かく分析していったらキリがないわけですが(笑)

そういった、子どもの姿をつぶさに見ていくこと。
子どもが、十分に“自分を発揮する”こと。
それが、保育の目標なのだと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「保育の目標」という言葉自体は、ちょっと固いですけれど、
大事なのは「子どもが子どもらしく在ること」に尽きると思います。
子どもが、どれだけ自分らしさを発揮できるか、
それを整えていくのが保育士の仕事です。
そして、”らしさ”を十分に発揮するためには、
いろいろな手段や方法があると知ること。
絵、音楽、制作、言葉、運動、表情…
自己の可能性を広げるためですね。
子どもたちには、今の大人を越えていってもらわなければなりません。
というか、越えたがっているのです。
そうやって、人類は発展してきたわけですから。
ですから、大人の想定を越えるくらいがちょうど良い。
保育士が「え?マジで?それやるの?!😱」って思ったとき、
保育は上手くいくのかも知れませんよ(なーんて😹)
“死ぬこと以外かすり傷”って言葉もありますけど、
保護者の大事なお子さんをお預かりしている以上、
十分に安全には留意しつつ、ですけどね。

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