こんにゃちは🐈、猫月だんくるおすてうすです。
保育園にお子さんを預けている保護者の皆様、“保育所保育指針”はご存じですか?
保育所(園)は、どういう意図の元で運営されている施設なのか、
あらためて見つめ直していきたいと思います。
▶保育所保育指針とは何か
保育所保育指針は、保育所保育の基本となる考え方や保育のねらい及
保育所保育指針解説 序章1より
び内容など保育の実施に関わる事項と、これに関連する運営に関する事
項について定めたものである。
保育所保育は、本来的には、各保育所における保育の理念や目標に基
づき、子どもや保護者の状況及び地域の実情等を踏まえて行われるもの
であり、その内容については、各保育所の独自性や創意工夫が尊重され
る。その一方で、全ての子どもの最善の利益のためには、子どもの健康
や安全の確保、発達の保障等の観点から、各保育所が行うべき保育の内
容等に関する全国共通の枠組みが必要となる。このため、一定の保育の
水準を保ち、更なる向上の基点となるよう、保育所保育指針において、
全ての保育所が拠るべき保育の基本的事項を定めている。
保育所保育指針は、保育所(保育園)の管轄省である厚生労働省が策定しています。
平成30年度に改定され、
“幼稚園教育要領”や
“幼保連携型認定こども園教育・保育要領”の改訂と合わせて、
内容の方向性を揃えました。
(幼稚園は文部科学省管轄、認定こども園は内閣府の管轄です。)
ちょっと脱線しますと、
幼稚園は教育的で、保育園は託児的という認識は、誤りです。
上記のように、
管轄省庁こそ異なれど、
幼児期の子どもの育ちについては、
保育士も幼稚園教諭も同じ方向性を持って子どもと関わっています。
小学校の教員ですら、
この誤った認識を是正できていないことがあるのは、
非常に残念です。
(裏を返すと、幼稚園出身・保育園出身で子どもを分別する教員は、認識を改める必要があります。
賢明な保護者の皆様は、そこを注目されるとよろしいかと思います。)
保育所保育指針は、それぞれの保育園が独自性を出しつつも、
“保育所(園)”という施設には必ず備えておくべき機能がある、と示している物です。
当然、そこで勤める保育士にも、保育所保育指針に則った保育が求められます。
“保育の基礎中の基礎”が、保育所保育指針だと言えるでしょう。
▶”非認知能力”に注目した改定
様々な研究成果の蓄積によって、乳幼児期における自尊心や自己制御、忍耐力といった主に社会情動的側面における育ちが、大人にな ってからの生活に影響を及ぼすことが明らかとなってきた。これらの知 見に基づき、保育所において保育士等や他の子どもたちと関わる経験や そのあり方は、乳幼児期以降も長期にわたって、様々な面で個人ひいて は社会全体に大きな影響を与えるものとして、我が国はもとより国際的 にもその重要性に対する認識が高まっている。
保育所保育指針解説 序章3より
改定に携わった汐見稔幸教授のお話に拠れば、
幼児期の非認知能力が、全世界的に注目されているとのこと。
非認知能力とは、数値化することが難しい内面的なスキルや能力のことです。
意欲や創造力、セルフコントロール、社会性など、
ヒトの内面にあって、テストなどで計ることは困難です。
でも、人として社会の中で生きていくために重要なのは、何となく想像が付きますよね。
この非認知能力の重要性は、
「ペリー就学前プロジェクト」(アメリカ)で明らかになりました。
この「ペリー就学前プロジェクト」を受けたグループの子どもたちは、
プロジェクトを受けていないグループの子どもたちと比較して、
認知能力(IQなど数値化できる知的能力)には大きな差がないものの、
学習成績が高く、
より安定した社会生活を送り、
犯罪率や生活保護受給率もより低い
ということが分かっています。
ちなみに、この「ペリー就学前プロジェクト」の追跡調査は
40年にも及んでいます。
プロジェクトを受けた子が成人し、
社会人として主力年代になるまで研究した結果ですから、
幼児教育がどれだけ人生に重要かを物語っていますね。
現在の保育所保育指針は、
この“非認知能力”をいかに伸ばすか、
子どもの成長を支えていくか
に重点が置かれています。
保育所保育指針の理解と保育の実践は、
子どもの成人後の生活に
大きく関わっているわけです。
子どもの20年後を見据えて保育していくことが、
保育士には求められているのですね。
▶子どもと関わる全ての大人のための指針
全ての子どもの最善の利益のためには、
子どもの健康や安全の確保、発達の保障等の観点から、
各保育所が行うべき保育の内容等に関する全国共通の枠組みが必要となる。
これが保育所保育指針の心臓だと思います。
各保育園で特色は出していくけれど土台となる部分は全ての園で共通だよ、と。
「英語に力を入れています」とか
「体操のトレーナーがいます」という保育園がありますが、
それは保育所保育指針を網羅した上で打ち出していく+αの部分です。
保護者として重視するのは、
「保育所保育指針をきちんと踏まえた保育園か」でしょう。
ここをオープンに語れる保育園かどうか、
見学や公開の時には尋ねてもらいたいと思います。
さらには、“子どもの最善の利益”のためには、
幼児期に非認知能力の成長を最大限に保障していく必要がある。
保育は、「小学校に入って困らないために」に行うものではないのです。
保育は、人生の根幹に関わる教育なのです。
「学校へ行ったときに困る」を口にする保育士は、
自分が子どもの人生のどこを見据えて保育をしているのか、
今一度自身を省みてもらいたいと思います。
また、保護者が就学を心配しているとき、
その子の現在地をきちんと照らして伝えられるか、
今後の見通しを語れるかも大事です。
「今のこの遊びが、大人になったときにこういう場面で発揮できるんですよ」と伝えられるか。
保育所保育指針を理解していれば、
おのずと活き活きとした子どもの姿と、将来の展望を伝えられるでしょう。
なぜって、目先の心配事よりも、
さらに将来の社会で飛翔する姿を想像できるからです。
それに、心配事さえも巣立ちのために羽ばたきの練習をする若鳥のような状況だと、ナラティブを語れるはずです。
▶基本こそ大事に
正直に言えば
「分かってるんだけど…読み込んでいる時間がぁ😓」
という人も多いのではないかな、と思っています。
でも…
医学書を読めない医師を信頼できますか?
法律に詳しくない弁護士に裁判を委ねますか?
保育指針を理解していない保育園・保育士は、安心して子どもを預けてもらえるでしょうか。
保育所保育指針は、
「保育所保育の基本となる考え方や保育のねらい及び内容など保育の実施に関わる事項と、
これに関連する運営に関する事項について定めたものである」を示しています。
保育士だけでなく、
子どもにとってもその保護者にとっても
重要なものだと言えるでしょう。
改定されたときだけ読み込むのではなく、
自分たちの保育を振り返るためにも、
保育園全体で保育所保育指針を読む時間があると良いですね。
また、保護者にも公開して、共有できる環境にあることが、
子どもたちにとっても望ましいと思います。
今回は、保育所保育指針のさわりの部分だけ触れました。
読み込むにしては、どうしても文言が固いので(おま言う😂)
ちょっと避けがちかも知れません。
ですが、解説書なども出版されているので、
少しずつでも理解を深め、保育の質を向上できていけると良いなと思います。
最後までお読みただき、ありがとうございました。
今後も、保育所保育指針についてはふれていきたいと思っています。
内容に興味を持っていただけたら、幸いです。
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