え?座って話を聞くのも「運動」なの?

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やってみたよ!こんな保育

こんにゃちは、猫月です😺

私が保育の中で心懸けているのは、
物事の根っこは何かを考えるために、
いったん“因数分解”してみることです。

子どもの行動だけを見て、
「どうしてできないんだろう」
「どう声を掛けたらいいんだろう」
と考えるのではなく、その行動には、どんな力や経験が必要なのかを一つずつ考えてみます。

今回は、「運動遊び」を因数分解します。

いきなりですが、あなたに質問です。

「じっと座っていられない子」に、あなたならどう声を掛けますか?

「座って」
「ちゃんと話を聞いて」

そう伝えたくなる場面もありますよね。

けれど、この記事を読み終わる頃には、「座って話を聞きなさい」という言葉が、少し違って見えてくるかもしれません。

まずは、保育士としてのおさらいです

子どもの身体は、大まかに見ると、
・頭や首から、胴体、足へ
・身体の中心から、手足の先へ
という方向で発達していきます

もちろん、子どもの発達は全員が同じ順番で進む一本道ではありません

ただ、苦手な動作があるとき、
その動作だけを繰り返すのではなく、手前にある身体の使い方へ戻ってみると、
ヒントが見つかることがあります

たとえば、両足跳びが苦手な子

「もっと跳んで」と繰り返す前に、
・しゃがむ時に膝を使えているか
・両足で踏ん張れるか
・段差から降りたときに、身体を支えられるか
そんな姿を見ていきます

指先を使うことが苦手な子なら、手指よりも大きな動作を見ていきます
・腕を大きく動かす
・肩で身体を支える
・肘や手首を動かす
より身体の中心に近いところから、遊びを組み立て直してみます

「ハイハイが大切」とよく言われるのも、
四つ這いの姿勢が、腕や脚だけでなく、首や背中、腹部など、
身体全体を使う動作だからです

重い頭を支えながら、姿勢を保ち、手足を交互に動かす

子どもは遊びの中で、身体のいろいろな部分を連動させています

座っている姿を見ると、身体を動かしていないように思えるかもしれません

でも、座り続けることも立派な運動です重い頭を支えながら、体幹で姿勢を保ち、倒れないように細かくバランスを取り続けています

そこで、「座って話を聞く」を因数分解してみます

座って話を聞くためには
・座る土台となる脚力
・相手に耳目を向け続ける力
・頭を支える背筋力
・姿勢を維持し続ける体力
そういった複合的な身体の使い方がいります

「じっと座っていられない」のは、意識やしつけだけの問題とは限りません
・姿勢を保つことに疲れているのかもしれない
・足が床につかず、身体が安定していないのかもしれない
・姿勢を維持するには、話が長すぎるのかもしれない
・周りの音や動きが気になるのかもしれない

そう考えると、解決方法は「話を聞きなさい」だけではなくなります
・座りやすい環境を整える
・子どもの体力に合わせて話を短くする
・身体を十分に動かしてから集まる
・まずは、集中したくなる話し方を考える

子どもへ求める前に、大人が変えられる因数もあるんです

子どもの生活では、
ボール、ハサミ、スプーン、箸など、いろいろな道具を使います

では、そもそも道具とは何でしょう

道具は、人間の身体で行うことを助けたり、より便利にしたりするものです
裏を返せば、自分の身体をある程度思い通りに動かせて、
初めて道具も使いやすくなります

「年長だから箸」ではありません

姿勢を保ち、肩や肘を安定させ、指先を細かく動かせるようになった結果として、
箸が使えるようになっていきます

食具を扱う手前には、手づかみで食べる経験があります
・食べ物をつかむ
・口まで運ぶ
・つかむ力を加減する
・落とさないように持つ

手づかみ食べの中にも、自分の身体を操作する経験が、たくさん詰まっています

箸の正しい持ち方を教えるよりも、
その手前にある経験を、十分に保障することが大事なんです

「汚されたら困る」という気持ちも分かります

でも、それは子どもの発達よりも、
大人の都合が優先されているのかもしれません

子どもは、自分の身体を思い通りに動かそうとして、毎日試行錯誤しています

目の前のものへ手を伸ばす
立ち上がろうとして転ぶ
狭いところを通ろうとして、肩がぶつかる

自分の身体がどこまで届き、どれくらいの幅があり、どんなふうに動くのか
子どもは、実際に動きながら確かめています

これ、実は大人も同じです

ストレッチやヨガをしてみると、
トレーナーの指示通りの動き方が難しい
呼吸ですらままならない
なんてことすらよくあることです

大人だって、自分の身体を思い通りに動かせるわけではないんですよね

子どもが身体を動かす中で、無意識にどんな試行錯誤をしているか──

たとえば、鬼ごっこは走るだけの遊びに見えますが、
因数分解すると
・走る
・止まる
・曲がる
・よける
・相手との距離を見る
・進む方向を予測する
・捕まりそうになって身をよじる など
本当に、いろいろな動きと無意識の考察が詰まっています

これが斜面や、芝と砂地が混じる場所だったら、さらに複雑になります

・身体をどちらへ傾けるか
・どれくらい足に力を入れるか
・この地面は滑るのか
・どこへ足を置けば転ばないのか

子どもは身体を動かしながら、目まぐるしく情報を集め、判断しています

「こう動いたら、こうなった」
「次は、こうしてみよう」

運動遊びは、身体を鍛えるだけのものではありません
試して、失敗して、やり直し、次の動きを考える

その経験は、制作や積み木などの静的な遊び、
そして就学後の学びを支える力にもつながっていくのです

「運動」と聞くと、走る、跳ぶ、投げるといった、
大きな動きを想像するかもしれません

でも、身体を動かすためには、
・見る
・聞く
・触れたものを感じる
・傾きを感じる
・力の入り具合を感じる
といった感覚も欠かせません

見ることや聞くこと自体を運動と呼ぶわけではありませんが、
それらも情報を得るための身体の操作になります

身体を操作するのは、生活の中でも行っています
トイレでの排泄も、その一つです
・尿意や便意を感じる
・少し待つ
・衣服を下ろす
・姿勢を保つ
・力を入れたり、緩めたりする

排泄するまでにも、いくつもの動作と身体感覚があります

失敗を避けることばかり優先していると、
自分の身体の感覚に気づき、試してみる機会が少なくなることもあります

だからこそ、失敗しても大丈夫な環境と、大人の心の余裕が必要です

うまく排泄できなかったとしても、
まずは尿意に気づいたことや、トイレへ向かったことを認め、
「自分の身体を操作してみる」機会を、何度でも保障していきたいですね


子どもの姿に「ん?」と思うことがあったとき、
すぐに本人の意欲や性格の問題にしないこと

どんな動作が必要なのだろう
その手前には、どんな経験があるのだろう
環境を変えたら、姿も変わるだろうか

そんな風に、いったん因数分解してみてください

冒頭の「じっと座っていられない子」も同じです

「座って話を聞きなさい」と伝える前に、
この子は、どんな姿勢なら楽に聞けるだろう
この子に合った、話の長さはどのくらいだろう
身体を動かす時間は足りているだろうか

そう考えることが、保育の始まりなのだと思います

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