子どもを”推す”大人で良いじゃない 〜”メダリスト”から考える〜

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タイトル「子どもを"推す"大人で良いじゃない」〜漫画"メダリスト"から考える〜のサムネイル。背景では、フィギュアスケートを持った少女が振り返っている。 家庭でもできる、子どもとの関わり方

【ただ子どもを“推す”保育士で良いのでは?〜メダリストから考える保育士像〜】

こんにゃちは、猫月です😺

みなさんは、漫画はお好きですか?
私も例に洩れず、
追い駆けている作品があります
職場の中でも、漫画好きがいるので、
時々情報交換をしています

キツキ
キツキ

猫さーん!
貸してもらった『アオアシ』面白かったです♪
あれ、今は何を読んでるんですか?

猫月
猫月

ん?これ?
メダリスト』だよ
フィギュアスケートの漫画だね

キツキ
キツキ

あ!名前は知ってます
へー、そういうのも興味あるんですね
アニメにもなってますよね

猫月
猫月

実は、まだ読み始めたばかりで…(笑)
三宅香帆さんの新書を読んでたら、
この漫画の面白いレビューがあったんだよね

三宅香帆さんの
「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか”(新潮新書)
を読んでいたら、

その中で『メダリスト』(つるまいかだ/講談社)の
レビューというか、
「あ、これは保育の話だな」
と感じられる考察があったんです

その一節が何とも興味深く、
そこから原作も読んでみようと思った次第でして

アニメのseason1は12話まで視聴したので、
三宅さんの考察と、
私がアニメから得た印象を元に、
タイトルにある”推し”──
大人が子どもをどう応援するかという視点から、
考えてみたいと思います

今回は、子どもと向き合うときの、
大人のスタンスのお話です

「メダリスト」の主人公は、いのりですが、
物語は、司が名古屋を訪れるところから始まります

司は、元アイスダンスの選手で、
全日本選手権4位の実績がありながら
アイスショーの選考に落ち続ける日々でした…

そんな折、
元パートナーの瞳が勤めるスケートクラブに呼ばれます
司に、アシスタントコーチをしてみないかと
誘い掛けたのです

司は、プロスケーターを目指しているので
断ろうとするのですが、
そこへいのり親子が体験に訪れたのです

いのりは、選手だった姉に憧れ、
密かにフィギュアスケートを
教本から学んでいました
受付の瀬古間さんにミミズを献上して、
コソ練こそしていましたが、
ズブの素人です

しかも母は、
「いのりを諦めさせるため」
クラブを訪れたのです

コーチになりたくなかった司ですが、
その体験レッスンで
いのりのこれまでの努力と
持ち得る才能を目の当たりにします

「いのりを輝かせるため」に、
コーチの人生を選んだのです

言わば司は、
“推し”を見つけ、
そのために生き様すら変えてしまったのです

司との二人三脚を始めてから、
初級バッジテストに合格したいのり──

ですが、母は「中学入学まで」という
時限付きの了承でした

いのりの姉は演技中の骨折で
引退を余儀なくされたので、
母のトラウマ的な心情も
大人としては、わからなくもありません

ですが、いのり自身は
真剣にトップスケーターを目指しているのです
母に競技を続けることに同意してもらうには…

そこで司は、ひとつの提案をします
「大会(名港杯)に出場しよう」
大会で上位に入ることができれば、
母もいのりの才能を認めるはず──
という提案に対していのりは
「優勝したいです!」と望むのでした

初級とはいえ、優勝するためには
それなりの技を構成する必要があります
できれば2回転ジャンプを組み込みたい
大会までの練習時間は限られている…

そこで司は、ふたつの選択肢を提案します
「たい焼き」作戦と「ショートケーキ」作戦です

派手な技をいちごに例えて、
2回転ジャンプをひたすら目指す
それがショートケーキ作戦

一方、地道に基礎的な技術を磨き上げ、
余裕があればいちご入にするのがたい焼き作戦

司はふたつの作戦を用意しつつ、
いのりに判断を委ねます

「自分の判断で優勝を逃したら…」
と危惧するいのりに、司はこう告げました
「どちらを選んでも、優勝させる」

いのりは司を信頼し、
スケーティングに重きを置いた
「たい焼き作戦」を選ぶのでした

いよいよ大会が迫り、
優勝のための“いちご”が欲しい…
けれども2回転ジャンプの習得には時間が足りない

現状のいのりができる技で優勝を掴み取るには???

基礎的な技術を磨き上げたいのりに、
司は“フライング シット スピン”を提案します
成功確率が高く、
いのりの出来であれば加点も狙える構成です
こうして本番を迎えます

演技の直前、司はこう告げました

いのりの「やりたい」を叶えるために、
司は自分の全てを捧げる覚悟を示したのです


試合前に、いのりは母に
「メダリストになりたい」と話していました

彼女の演技を目の当たりにした母は、
いのりに尋ねます

そして、いのりを抱き締めます

いのりの「やりたい」を叶えるために重ねてきた、
司の試行錯誤が、
ひとつ結実した瞬間が訪れたのです

名港杯は優勝しました
けれど、その一方でジャンプの課題は残されました

いのりは、さらに上級を目指し、
1級のバッジテストを受けることになります
1級に合格すれば、出場できる大会も増えていく
より高いレベルの世界が、現実のものとして見えてきたのです

そのテスト会場で、二人は新たな出逢いを果たします
同世代の選手・絵馬と、
その指導にあたる蛇崩アシスタントコーチです

絵馬は、いのりと同じ階級でありながら、
2回転ジャンプを安定して跳んでいました
それを見た司は、迷いなく蛇崩に頭を下げます

「ジャンプの指導方法を、教えてください」

蛇崩もまた、
指導における情報共有の重要性を理解しており、
「ええで!」と
司の申し出を受け入れます

司も蛇崩も、アシスタントコーチ
まだまだ途上の立場です
とはいえ、“師”という立場にある以上、
選手の前で他のコーチに頭を下げるというのは、
決して簡単な選択ではないはずです

それでも司は、そうしました

私自身、
自分の保育を高めるため、
そして自分の現在地を確かめるためには、
園外の保育士と交流することが
極めて重要だと考えています

自分一人の発想だけで、
課題を打開し続けるなんて、
そもそも無理なんです

私が参考にしている書籍のひとつに、
「なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?」(村山太一/飛鳥新社)
があります

著者の村山さんは、
ミシュラン一つ星を獲得したオーナーシェフです
それほどの実績を持ちながら、
レストラン経営を学ぶために、
アルバイトという立場でサイゼリヤに入りました

トッププロでありながら、
目的のために他のプロに師事する
こうした謙虚さと向上心こそが、
人をさらに高めていくのだと思います

司もまた、
コーチとして評価されるためではなく、
いのりのジャンプ習得のために、
自分の頭を下げました

それは、自分を
「未熟なコーチだ」と認める行為であり、
同時に、
いのりの「やりたい」を叶えるための、
もっとも誠実な選択だったのです

“推し”のために、自分を捧げる
──そういう覚悟だと私には見えました

いのりの所属するクラブに、
新たに理凰がやってきます
本人が、自身の成長に行き詰まりを感じ、
環境を変えたいと考えたからでした

理凰には、いくつものコンプレックスがあります
父が元銀メダリストであること
そして、同世代の光に、
圧倒的な才能で追い抜かれてしまったこと

さらに、6級の壁──
3回転+2回転のコンビネーションにもぶつかり、
その劣等感は、ますます強まっていました

夏の合宿で、
司は理凰の内に抱えた劣等感に触れます。
そして、言葉ではなく、
自ら滑ることでそれに応えました

司自身もまた、
強いコンプレックスを抱えてきた人間です

14歳で夜鷹純に憧れ、
スケーターを志しましたが、
年齢を理由にクラブにも所属できず、
本格的なコーチングを受けたのは20歳になってから

キャリアもない
実績もない
シングルでは初級バッジしか持っていない

──アイスダンスで全日本4位にまで上り詰めたものの
その実績すら瞳の実力に牽引されたものだと思っている

司は、
「始めるのが遅かった」劣等感とともに、
それでも夜鷹を目指し続けてきたのです

ですがその劣等感は、
11歳で本格的に滑り始めたいのりの成長を見て、
覆されました

いのりを指導する司は知っています
「才能」を枠にはめて考えてしまうことが、
どれほど可能性を狭めてしまうのかを

理凰が目にした司のスケーティングは、
現役時代の夜鷹純の滑りに、驚くほど似ていました
むしろ、スケーティングだけを見れば、
「夜鷹純より巧いのでは」と
思えるほどの完成度だったのです

理凰は、そこで初めて、
努力を積み重ねる意味を知りました

合宿前、
目標を白紙で提出していた理凰でしたが、
司のスケートを目にした翌朝、
目標を記入した用紙を提出し、
こう告げます

「改めて、今日もよろしくお願いします
 明浦路先生」
(パートナーだった瞳ですら苗字を覚えてくれないのに!!)

司にとっての“推し”は、いのりです
けれど、努力する子どもたちは、
皆等しく、成長を願う存在でもあります

選手の願いが実を結ぶためなら、
司は自分のコンプレックスすら明け透けに語り、
彼らの中にある可能性を信じ、
意欲の源泉へと変えてしまう

これほどまでに献身的な指導者が、
いったいどれほどいるでしょうか

三宅香帆さんのコラムを読んだ時点では、
私はまだメダリストに触れていませんでした
話題作だということは知っていましたが、
アニメも原作も、未履修だったのです

それが、この記事を書いている現在、
気づけば4周しています(笑)

そのきっかけになったのは、
三宅さんのコラムにあった、この一節でした

この一文を読んだとき、
私は思ったのです

「これは、保育園にも通ずる話なのでは?」と

保育士は「先生」と呼ばれることの多い立場です
私自身は「先生ではない」と自認していますが、
それでも世間の多くは、
保育士を「先生」だと見ています

けれど、保育園は
子どもたちの生活の場であり、
彼らが集うコミュニティです

主体はあくまで子どもにあり、
保育士はその成長を見守り、援助する存在
教え、導く存在とは、少し違うのです

三宅さんは、
『メダリスト』の師弟関係を
「熱狂を共有するバディ」と表現しました

──そうだよな
保育士も、
子どものバディでいい
子どもを“推す”大人でいればいいんだ!

そう感じたからこそ、
私は司といのりの関係を確かめるように、
視聴を始めて、4周に至っています

私の好きな漫画に、
ちはやふるがあります

競技かるたを描いた作品ですが、
主人公・千早の師匠である原田先生が、
こんな言葉を残しています

司はもともと、
プロスケーターを目指す「主役」でした
けれど、いのりという強烈な可能性と出逢い、
コーチという“脇役”の立場を引き受けます

それは諦めたのではなく、
選び直した結果なのだと、
私は感じています

保育の現場でも、
「自分の保育」を追い求める人に出会います
それ自体は、自然なことです

ただ、保育園という場においては、
主役はあくまで子どもたち
保育士がしたい保育よりも、
子どもたちがやりたい保育こそが、
大切にされるべきなのだと思うのです

たい焼きとショートケーキ、
二つの作戦を提示した場面で、
司はこう言いました
「俺にも、もちろん意見はある」

そのうえで、
「自分で決められる選手になってほしい」と、
選択をいのりに委ねます

「あなたは、
 大切な自分の人生を賭けているんだ」
あくまで、主体はいのりにあると、
尊重しているのです

けれど、その成功は、
誰にとっての成功なのでしょうか

ここでひとつ、
少し極端な問いを投げ掛けます😁

1歳児クラスの冬の制作で、
「プレゼントを願うくつした」を作ったときの話です

画用紙に糊を塗り、
飾りを散らす
素材の感触を味わえれば、それで十分
そんなねらいでした

ところが、ある子は
画用紙いっぱいに糊を塗りたくると、
それで満足して制作を終えてしまいました

「キラキラもあるよ」
「モコモコもあるよ」と声をかけましたが、
その子は首を振り、玩具遊びに戻っていきました

あなたなら、
この子にどう関わるでしょうか?

私はそのとき、
「これは、保育士の哲学を試されているわー」
と感じて、声を出して笑ってしまいました

正解はありません
でも、『メダリスト』を見た今の私なら、
どう考えるでしょうね

子どもを”推し”だと思うと、
関わり方は、少し変わってきます

毎日”推し”に会える仕事だと考えたら、
働き方のスタンスも、
きっと変わってくるでしょう

ここで、今回の記事を終えようと思います

司の姿勢には、
私自身が肯定されたようにも感じました

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