こんにゃちは、猫月だんくるおすてうすです。
今回も、酒井沙弥香さんとの共同企画
【絵本の語り場 ~絵本は、ええ本~】で紹介した
絵本のレビューを寄せたいと思います。
【絵本の語り場 ~絵本は、ええ本~】は、
みんなで絵本についてワイワイ喋ろう!というものです。
毎月一回、
テーマに沿った絵本を持ち寄って
その絵本の魅力
選んだ基準
どんな読み方・提供の仕方をするのか
といったことを楽しむ時間にしてきました。
ということで、
第7回 絵本の語り場
で私が紹介した絵本は、こちらです。
「もりのかくれんぼう」
作:末吉暁子
絵:林明子
版:偕成社
あらすじ
公園で遊んだ帰り道。
お兄ちゃんの後ろを、けいこはついていきます。
お兄ちゃんは「うちまで競走しよう」というと、
ぱっと石垣の角を曲がっていきました。
いつもの道と違います。
「あっ、ちかみちいくのね。ずるい」
けいこも慌てて後を追い掛けました。
行き止まりの生け垣から、
お兄ちゃんの足がちょろっと引っ込むのが見えました。
まねっこして、けいこも生け垣の下を通り抜けようとしたのですが・・・。
やっとけいこが生け垣の向こう側に立ち上がった時には、
お兄ちゃんはもうどこにも見えなくなっていました。
そればかりか、けいこは見たこともない、
大きな森の入口に立っているのでした。
“冒険”と“探検”の違い
絵本でも、冒険や探検を題材にした作品は多いですね。
そして、子どもたちは冒険や探検が大好きです。
ところで、冒険と探検の違いはご存じですか?
簡単に言うと、
危険を冒す行動自体が目的であるのが冒険。
目的の物を探し出したり、明らかにしたりする為に未知の領域へ赴くのが探検。
といった感じです。
私は、
遭遇系作品が冒険、
探求系作品が探検と考えています。
もりのかくれんぼうでは、
けいこは意図して森に迷い込んだわけではないので、
冒険絵本と考えています。
一本向こうの道には、何がある
大人でも、
普段通い慣れている道と、
一本向こうの路地とでは、
通る時の心持ちが違うと思います。
頭の中では「こことここで、同じ道に繋がるはず・・・」と思っていても、
実際に一本向こうの道を歩いたら、
思いもよらぬ場所へ出ることってありますよね。
子どもにとっては、
そのスケールが更に増します。
大人ほどの経験が無いので、
想定の中での修正が難しいからです。
そして、不思議と立ち戻るという選択肢は選びません。
ヒトは、前に進むようにできているのかも知れませんね。
向上心がそうさせるのかな?
あ、大人でもいますね。
ナビゲーションを無視して近道をしようとした挙げ句に、
袋小路でにっちもさっちもいかなくなる人。
レンタカーで、住宅街に飛び込んでいったケースをいくつか思い出しました(笑)
“線”を越える、という行為
「一線を画す」とか、
「敷居を跨ぐ」という言葉がありますが、
引かれた”線”を越えるという行為には、
別の世界へ踏み込むという意味合いがあります。
実際、神社の鳥居や寺院の門は、
外界との結界の役割があるそうです。
最近の住宅には門や垣根のある家屋が少なくなりましたが、
私が幼少の頃は長屋の周りにも門や生け垣が設けられていました。
”世界”の内と外が、線引きされていたのです。
けいこは、生け垣をくぐることで、
不思議な森の世界へと迷い込みました。
正解の境を踏み越えたのです。
「となりのトトロ」でも、
メイは低木をくぐった先でトトロと出遭いました。
それぞれ、知らぬ間に世界の端境を越えているのです。
もうひとつ、異世界へ迷い込みやすいのが、穴ですね。
「不思議の国のアリス」や
「めっきらもっきら どおんどん」は、
穴に落ちて不思議な世界へと誘われています。
「マルコヴィッチの穴」なんて映画もありましたねー。
この線を越えるという行為、
意外と気を付けた方が良いです。
自然界の動物には、テリトリーがありますが、
ヒトは”線”でこのテリトリーを視覚化し、より顕著に表しました。
動物にとって、
他者のテリトリーへ踏み込むという行為は、命を賭ける行為です。
そして、ヒトも動物です。
保育園や学校で線を簡単に扱う人は、
自分の行為の重大さを承知なさってください。
子どもに、命を賭けさせていますよ。
子どもは、大人よりも、より本能を基軸に生活していますからね。
命賭けのストレスを、安易に押しつけていませんか。
ま、それは脅しですが(笑)
パワースポットを信じている人は、
少なくとも”線”を丁重に扱うはずです。
パワースポットは、自然の結界内に溜まったスピリチュアルな力の恩恵を与るのですから、
”線”を大事にしない人は、ただ矛盾を体現しに行っているだけですね。
何の効果の恩恵も得られる道理はありません。
絵本の中を、冒険する
「もりのかくれんぼう」は、かくれんぼ絵本です。
ゲームブック的な要素を楽しむことができます。
物語としては、4~5歳児向きですが、
動物を見つけるだけなら2歳児であれば楽しめるでしょう。
一度見つけたらおしまい、という物でもありません。
子どもは、くり返し同じ遊びをくり返す中で、
「(自分は)できる!」自信を獲得していきます。
何回も同じ動物を見つける経験は、
子どもの成長にはとても大事な物です。
更に言えば、絵本を開くこと自体が、
不思議な世界へ飛び込む勇気のくり返しです。
それこそ、冒険の扉を自分で開いているのです。
自分で一線を越える経験、
のちのち未知の世界へ踏み出す子どもたちには、
これも大事な経験です。
私は、絵本は子どもたちが初めて体験するヴァーチャルリアリティだと考えています。
ホモ・サピエンスは、
フィクションを信じることができるから、発展したと言われています。
目に見えない物を想像し、信じ、具体的だと捉えることができるから、
伝承や学問が成立しているのですね。
実際には体験できないことを、体験的に獲得できる絵本は、
子どもたちの発達にはとても重要な経験であり、学習素材です。
その上で、文語と口語という、国語の基本も培える。
子どもと一緒に、絵本の世界を冒険してみませんか?
あなたも、リンドバーグやアームストロングを追体験できますよ。
もちろん、トムソーヤにだって、ロビンフッドにだってなれます。
絵本の中でなら、”I can fry!”ですからね🎵
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