保育での インクルーシブ どんなこと?

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保育でのインクルーシブどんなこと? みんなのQ&A

こんにゃちは、猫月です😸

保育園や幼稚園など
子どもが集団で生活する場には
いろいろな子が通ってきます

ワツキ
ワツキ

クラスの中でも海外から来たお友だちが増えてます

猫月
猫月

発達の特性や家庭状況などで
保育士が必要とされる場面もあるね

外国籍で母国語が異なる子
宗教や文化の違いを持つ子
発達の特性を持つ子
家庭に事情を抱える子

そんな多様な子どもたちが集まる場で
一人ひとりを「包括的」に支える保育を目指すのが
インクルーシブ保育です

しかし、実際に現場で取り組むとなると
やはり簡単ではありません
子どもの特性に応じた支援方法の選択や
児童相談所や専門機関との連携など
対応する課題はさまざま
保育士にとっては日々学びと挑戦の連続です

私自身は
キャリアのスタートが障害者支援施設でした
障害者と関わることが日常だったんですね

てんかん発作の対応
経管栄養や導尿カテーテルのケア
理学療法士や言語聴覚士、臨床心理士などとの協働

そういう経験をしてきましたが
未だに支援方法は悩むことだらけです

集団保育と個別のケアを両立させるために
頭を悩ませる毎日です

今回の記事は5つの項に分けて
私の考えるインクルーシブ保育の実践について
お話ししていきます

最後までお付き合いいただけたら
嬉しいです

私が「インクルーシブ」保育という言葉を知ったのは
プロフェッショナル~仕事の流儀~』(NHK)で
野島千恵子さんが紹介された回でした

野島千恵子さん

野島さんは大阪の路交館で
多様な子どもたちが共に学ぶ保育の場を実現し
「子ども同士が互いを教材として学び合う」環境を大切にしています

障害の有無や年齢、能力の違いを
「学びの機会」と捉え
大人が過剰に介入せず
子どもたちが自ら考え、話し合い、成長していく
というプロセスを重視しています

たとえば
年齢や発達段階が異なる子ども同士のトラブルが起きた際も
すぐに解決策を示すのではなく
時間をかけて子どもたち自身で話し合い
解決策を模索させる方針をとるそうです

子どもたちはこのような経験を通じて
他者を理解し、尊重する力を育んでいきます

野島さんの保育哲学の中でも
私が特に感銘を受けたのが
「子どもは、子どもの中で育つ」
という考え方です

子どもは、子どもの中で育つ

保育園には本当にさまざまな背景や
特性を持った子どもたちが通っています

そして、いつだって保育の主役は子どもたちです
私たち保育者は、その援助者であるべきだと考えています

もちろん、大人が手を差し伸べなければならない
場面もありますが
集団の中での課題や困難に対しては
子どもたちに委ねることが大切です
そこには、大人が想像もできないような
学びや成長の瞬間があるからです

子どもたちに委ねていくと
こんなことが起こります

私が以前担任していらクラスには
重度の心身障害があるYちゃんがいました
Yちゃんは自分で歩くこともできなければ
喋ることもできませんが
視線や表情でのコミュニケーションが得意です

視線でYes/Noを答えます
興味のある対象物を見ることもできます
嬉しい時は笑って手を振ります
怒ったときは唇を尖らせます

こういったYちゃん独自の「言葉」を
子どもたちは少しずつ理解し
Yちゃんの気持ちを代弁したり
「おむつが濡れたよ」と
大人に知らせてくれたりしました

もし、大人だけがYちゃんの介助を担っていたら
Yちゃんのコミュニティは
とても狭いものになっていたでしょう
しかし、子どもたちがその輪に加わることで
Yちゃんの世界は大きく広がりました
そして、関わる子どもたち自身も
大切な学びを得ていたように思います

日本の保育園における外国籍の子どもの数は増加傾向にあります

外国にルーツを持つ子どもの保育に関する研究」によれば
2008年には約13,000人だった外国人児童が
2016年には約98,000人に達しています
これは保育園での多文化共生が
現実の課題となっていることを示しています

言葉の壁をどう乗り越える?

入園してくる子どもの母国語も多様化していて
私の保育園の場合ですが
英語、中国語、ベトナム語など
様々な言葉が日常的に聞かれます

ただ、私自身も
学校で習った英語が少し話せる程度
子どもの母国語を使っての
コミュニケーションは
なかなかハードルが高いのが現状です

とはいえ、
一朝一夕に話せるものではないですよね

それでも、何とか言葉の壁を
越える工夫をしています
たとえば
「ピクトグラム」やイラストを活用することで
言葉を介さなくても
動作や意味を伝えやすくしています
また、ジェスチャーを交えながら
子どもたちと日本語の簡単な単語を
少しずつ共有していく取り組みも行っています

興味深いのは
こうした場面で活躍するのが
子ども同士の自然な関わりです

言葉が通じなくても
子どもたちはジェスチャーや表情、遊びを通じて
不思議とコミュニケーションを取るんです
大人の私たちも
彼らの工夫を見習いたいなと思うほどです

文化・宗教の違にも配慮する

言葉だけではなく、文化や宗教の違いにも注意が必要です

たとえば、食事のマナーひとつをとっても
日本では食事の時に
茶碗やお椀を持って食べるのが一般的ですね
ですが、海外ではタブーの場合があります
また、箸も東アジア独特の食文化です

宗教に関しても、家庭ごとに
重要視するポイントが異なります
たとえば、イスラム教徒の家庭では
豚肉を避けるだけでなく
調理過程や食器の使い方に
厳しいルールがある場合もあります

また、クリスマスやハロウィンなど
イベントへの参加についても
家庭ごとに考え方が異なるため
事前に確認することが重要です

一人ひとりを尊重する姿勢

「外国籍の子ども」と一括りにせず
一人ひとりの背景や家庭の状況を丁寧に理解し
必要な援助を考えることが大切です

これは日本人家庭でも同じですね
保育園での多文化共生は
私たち保育士にとって新しい挑戦であると同時に
大きな学びの機会でもあります

保育園では
身体障害を持つ子どもたちが安心して生活できるよう
さまざまな支援が求められます

身体障害には、大きく以下のような分類があります
・肢体不自由(上肢、下肢、体幹)
・視覚障害
・聴覚または平衡機能の障害
・音声機能、言語機能または咀嚼機能の障害
・内部障害(心臓や呼吸器など、体の内部機能の障害)

これらは一括りに「身体障害」と言っても
必要な支援は一人ひとり異なります

たとえば、メガネや補聴器で補える場合もあれば
日常生活で完全な介助が必要な場合もあります
また、内部障害がある子には
看護士による医療的ケアが欠かせません

ここでは、私が出会ったYちゃんの事例をもとに
保育現場での支援についてお話しします

肢体不自由のYちゃんの保育

Yちゃんは子ども用車いすで生活し
食事や排泄は全面的な介助が必要でした
それでも、保育園で楽しく過ごし
自分らしく成長していけるよう
いくつかの工夫をしてきました

まず意識していたのは
視線の高さを合わせることです

保育者がYちゃんと関わるときには
屈むか、抱き上げて
同じ目線にするようにしました

また、活動に参加するときも
Yちゃんが友だちと同じ視界で過ごせるよう心がけました

たとえば、立位を支える抱き方をすることで
Yちゃんが周囲の子どもたちと同じ目線で関われるようにしたのです

視線が変える世界

視線の高さを意識した結果かもしれませんが
Yちゃんは友だちや保育者と
積極的に関わろうとする場面が増えていきました

ある日、5歳になったYちゃんは
友だちの真似をして
保育者の背中を小突いてから知らんぷりをする
なんていたずらをするようになりました
「叩いたでしょ?」と聞かれると
小さく舌を出してニヤリとする姿に
私たち保育者も思わず笑顔にさせられたものです

こうした行動を見て
「子どもは、子どもの中で育つ」という言葉の意味を
私たちは改めて実感しました

Yちゃんは、友だちとの関わりを通して
自分なりに行動を模索し
少しずつ自発的に動くようになっていったのです

支援は「できること」を引き出すために

Yちゃんへの支援で心がけたのは
「彼女ができることを最大限引き出す」ということです

たとえば
移動時には彼女を抱き上げ
進む先が見えるようにして安心感を与えました

また、遊びの中で歩行訓練やストレッチを取り入れることで
彼女の身体が持つ可能性を広げるお手伝いをしました

視覚からの情報は
私たちの認知の約7割を占めるといわれます
だからこそ、Yちゃんが周囲の世界をしっかりと感じ取れるよう
視界を工夫することも大切にしていました

いたずらっ子になったYちゃん

卒園も間近の頃になり
Yちゃんは寝返りやいざりを駆使して移動し
保育者にいたずらを仕掛けるのが日常になっていました(笑)

こうした行動は
身体の不自由さを補いながらも
Yちゃんが自分らしく世界と関わろうとする姿の表れ
だったのではないかと思います

保育園には発達障害を持つ子どもたちも通っています
発達障害の子どもたちが安心して過ごし
自分らしく成長できるような支援と配慮が求められます

発達障害には、主に以下のような分類があります
・自閉症スペクトラム症(ASD)
・注意欠如・多動性障害(ADHD)
・学習障害(LD)
・コミュニケーション障害
・運動発達障害

これらの障害は一人ひとり特徴や現れ方が異なり
「目で見てわかる」身体障害とは違い
外見だけでは気づきにくい場合が多いです

そのため、丁寧に観察し
子どもの特性を理解した上で
適切な支援を提供することが必要です

ここでは
実際に私が保育現場で出会った
2人の子どもたちを例に
発達障害への関わり方をご紹介します

ASDのOちゃんとの関わり

Oちゃんと出会ったのは3歳児クラスでした

Oちゃんには以下のような特性が見られました
・発語がほとんどない
・保育者の言葉の理解が難しい
・意に沿わないことがあると動的パニックになる

幸いなことに、加配保育者が配置され
手厚い支援が可能でした
私がOちゃんと関わる上で意識したの
行動の動機を探り、それを代弁することでした

たとえば
Oちゃんが突然部屋を飛び出したとき
その理由を探るようにしました
隣のクラスのおもちゃが気になったり
給食室の匂いに惹かれたりすることがありました

「このおもちゃで遊びたかったの?
 “貸して”って聞いてみようか」とか
「給食、まだできてないね
 おいしそうな匂いがするね」とか
Oちゃんの気持ちに寄り添うような
言葉を掛けるようにしました

Oちゃんの行動の動機を言葉にすることで
Oちゃん自身も少しずつコミュニケーションの形を学んでいきました
その結果、動的パニックの頻度は減少しました
行動が理解されることが
Oちゃんにとって安心感につながったのではないかと思います

LDのWちゃんとの関わり

5歳児クラスで出会ったWちゃんには
学習障害(LD)の疑いがありました

Wちゃんの特性は以下のようなものがありました
・Qが130と高く、知的には非常に優れている
・協応動作が苦手で、目と体の動作がうまく連動しない
・聴覚過敏があり、些細な音にも強いストレスを感じる

たとえば
本を読む際に、改行された文章の続きが見つけられない様子がありました
また、遠くの消防署のサイレンが聞こえると苦痛を訴えることもありました
このような特性から
周囲と同じ活動に参加することが難しい場面が多々ありました

支援の工夫と専門家との連携

Wちゃんへの支援には専門家の助けが欠かせませんでした
連携しながら以下のような支援を行いました

・聴覚過敏への配慮:
 言語聴覚士(ST)の助言を受けて
 イヤーマフを導入しました
 生活音を緩和しWちゃんが過ごしやすい環境を整えました
・協応動作の支援:
 作業療法士(OT)と連携し
 簡単な動作課題を通じて目と体の連動を練習しました
・対人スキルの向上:
 臨床心理士とともに
 ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)を実施し
 相手の話を聞く練習や場面に応じた適切な行動を学びました

支援の限界と未来への願い

発達障害への支援では
特性が完全に改善するわけではなく
本人の成長を見守ることが大切です

Wちゃんのケースでは
最終的にご家族の判断で医療的支援が必要とされました

保育現場でできることには限界がありますが
子どもが少しでも自分らしく過ごせる環境を
整えることを目指してきました

発達障害の子どもたちが抱える困難を知り
その支援方法を共有することで
保育の現場がよりインクルーシブになることを願っています

最近、「LGBTQ+」や「ジェンダー」に関する話題が増えていますが
保育園の現場では、まだこのテーマが
あまり議論されていないように思います
幼児期から多様性を尊重する環境を整えることは
子どもの未来にとって重要ではないでしょうか

女子が自分を“ぼく”ということ

女子が『ぼく』で何が悪い?言語学者に聞いてみた」の記事では
中村桃子教授が少女の「ぼく」という言葉遣いについて
次のように説明しています
・少女が「ぼく」を使うことは歴史的に珍しい現象ではない
・性別に関する言葉の規範が女児には特に強く求められる
・成長の過程でアイデンティティを模索する自然なプロセス
・「ぼく」呼びを否定的に捉える必要はない
といったものでした

この視点をもとに
保育現場での子どもの言葉遣いにも
柔軟に対応する重要性を考えました

この記事を読んだ私の感想は
・保育園にも自分を「ぼく」と呼ぶ女の子がいる
・一方で自分を「うち」と呼ぶ男の子がいる
・幼児ながらに「自分の性を限定されたくない」という
 思いを無意識に持っているのではないか
というものでした

私の娘も年長の頃から
自分を「ぼく」と呼ぶようになりました
祖父母は心配していましたが
成長の一環だと説明し、理解してもらいました
子どもの言葉には、その時々の心の動きが反映されています

保育園には無意識の性差別がある

「LGBTQ+」や「ジェンダーレス」という言葉が
日常でも耳にするようになってきましたが
保育士として感じるのは
「男らしく」「女らしく」という価値観が
保育現場に根強く残っていることです

たとえば、同性介助が原則とされる中
私のような男性保育士には
女児への介助に配慮を求められるなど負担が偏りがちです
一方で女性保育士が男児を介助する際には
ほとんど問題視されないのは不思議です

このような無意識の偏見をなくすためには
現場での価値観のアップデートが必要です

子どもたちが多様性を自然に受け入れ
自分らしさを大切にできる社会を築いていくために
私たち保育士は柔軟な視点と偏見のない関わり方を心がけたいと思います

そのためにも
性別にまつわる規範にとらわれず
子どもたちの声に耳を傾ける保育を目指したいです

最後までお読みいただき
ありがとうございます

インクルーシブ保育は
保育者が子どもに寄り添うだけでなく
子どもが、子どもたちの中で個性を発揮できるように
保育園というコミュニティを
醸成していく保育だと思います

私は常々子どもたちに
「大人がいなくても
 みんなだけで生活できるのが理想だよ」
「でも、実際は難しいことがあるから
 それを手伝うためにいるよ」
と伝えています

性別、国籍、障害の有無を問わず
ひとりひとりが自分の得意を発揮して
お互いを助け合えるのが
社会としては理想的だと思います

しかし、実際には様々な困難があります
たとえば、言葉の壁や集団行動の難しさ
ジェンダーに対する偏見など
子どもたちは時に戸惑いや葛藤を抱えることもあります

だから、大人が手伝えるうちに
子どもたちが「自分たちで考え、解決する力」を
伸ばしていけるように支えたいと思います

汐見稔幸教授は次のように仰っていました
「これからの社会では
 正解のない問題を解決できる力が必要になる」
「意見とは、他者をくぐって初めて意見になる」
この言葉は
子どもたち同士が話し合い
互いの意見を尊重し合う経験が
未来の力を育むことにつながると教えてくれます

私も、子どもたちの可能性を信じ
すべての子どもを包括的に受け入れる保育を目指して
努力を続けたいと思います
子どもたちの多様性を尊重しながら
自分らしく成長できる環境づくりを進めていきましょう

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