子どもは力を持っている─大事なのは、発揮できる環境と支える配慮 #4

※記事内に広告を含む可能性があります
※記事内に広告を含む可能性があります
『子どもは力を持っている──大事なのは、発揮できる環境と支える配慮』第4話のサムネイル画像。カラフルなおもちゃを背景に、「給食の時間にこそ、子どもの主体性を」というメインコピーと、「“信頼”が意欲を育てる給食の場面」という副題が記載されている。左下には笑顔の男の子、右下には正座で給食を食べる子どものイラストが配置されている やってみたよ!こんな保育

こんにゃちは、猫月です😺

今回は1日の中でも「給食」の時間にフォーカスして、
保育の環境や子どもとの関わりについてお話ししていきます
さっそく、始めていきましょう

配膳の時間──
子どもたちを席に着かせたまま、
大人がひと皿ずつ運んでいく…そんな場面をよく見かけます
けれど私たちは、これを「子どもを無駄に待たせる行為」だと考えました

私としては、保育士と園児の関係性は“B to C”だと捉えています
「ビジネス的に捉えるのは温かみがない」という意見もいただきますが、
感情論は別にして、社会的な関係性で言えば、
保育園はBusinessの立場であり、
園児・保護者はCustomerです

要は、気持ちよく食事に向かえる雰囲気を作ることが、
保育園での給食でも大切だと思うのです

もうひとつの検討事項がありました
配膳中に読み聞かせをする是非です

子どもが立ち歩かないようにという理由で、
絵本や紙芝居の読み聞かせをする保育士がいます
実際に私たちもそれをやってきていましたが、違和感も感じていました

絵本を楽しもうにも、配膳する大人が周囲を動いていては、
集中が途切れてしまうのは当たり前です
読み聞かせをするならば、別の場で行えば良いのです
私たちは、読み聞かせと配膳を分けることにしました
そして、配膳の済んだ席へ子どもたちを通すように流れを変えたのです

食事を楽しんでもらうためにも、環境と流れの整備が必要です
読み聞かせるなら読み聞かせの環境を、
食事ならば食事の環境を、
子どもが集中できるように丁寧に整えるのが、
それこそ“マナー”ではないでしょうか

給食の時間の配慮を見直してきた私たちですが、
子どもたちの意欲に合わせてさらに工夫を重ねました

大人が下膳をする中で、手伝いをしようとする子どもが出てきます
初めは、空いた器をテーブルの真ん中に集めてもらっていたのですが、
食事を終えるタイミングには個人差があります
まだ食べている子がいるのに、汚れた器が重なっていくのもどうなんだろう?
そんな思いも私たちの課題になっていました

子どもたち自身はといえば、本当は大人がやるように下膳したいのです
下膳を手伝いたい思いを「危ない」と止めるよりも、
どうしたら安全にできるかと環境を整えたい
動線を整えつつ、器の持ち運び方などを子どもたちと一緒に考え、
食べ終えた子から食器を下げるようにしていきました

下膳をする中で、次第に子どもたちは
配膳も自分でしたいと言い出すようになりました
もちろん、食器には熱いものもあればこぼれやすいものもあります
でも、それを理由に“やらせない”のではなく、
安全にできることから「やれる仕組み」を整えることが私たちの姿勢だと考えました

一斉に配膳に動けば混乱が起こります
だからこそ、ここでも前回紹介したくじ引きの仕組みを活用しました

くじを引く
→ 手を洗う
 → テーブルにつく
  → メンバーがそろったら配膳スタート
誰が早くても遅くても、“順番”は自然に調整される
保育者が「待つのが上手だから」などと指名しないことで、
主観による優劣が生まれないのもくじの利点です

子どもたちは、くじを通して給食の準備を楽しみにしながら、
自然に食事の場へ移行していきました

「食事は楽しい雰囲気で」
そう配慮を工夫してきた結果、
子どもたちの食事にある変化が現れました

配膳と並行して、子どもたちには「食事の量も自分で加減してね」と伝えていました
苦手なものは一口は食べてね、というお願いと併せて

そういう雰囲気の中で給食を進めてきたある日、
私たちは大きな変化に気づきます
「あれ?最近、残菜が少なくない?」
減らしていいとしていたはずの苦手な食材を、
子どもたちは自分の判断で受け入れ始めていたのです

「給食で食べてるから」と家庭でも挑戦するようになった子もいました
これは、苦手を認めてもらえる安心感や、
大人から任せてもらえる信頼感が、
子どもたちの気持ちを揺さぶったのかも知れません

翌年度、私たちはクラスを離れました
私たちとしては、3歳児でこれだけ自立をした子達なら、
誰に引き継いでも、各々の力を発揮してくれると信じていたのです

ところが、新しい担任は「持ち上がりがいないから」と言う理由で、
配膳・下膳をすべて保育者が行い、食事量も大人へ申告する方式に戻しました

その結果──
食事時間は落ち着かず、食後は残菜だらけ
日中の保育でも応援の保育者が必要になりました

前担任として、引き継ぎ時に言葉を尽くしたつもりでしたが、
なかなかシステムに込めた私たちの“思い”は、
同僚であっても伝わらなかったようです・・・

子どもたちの思いは、誰にもわかりません
けれど、私は思います
あの子たちは、大人から信頼されていた誇りを、
また大人の手によって失ったと感じたのではないかと

食事は、単なる“栄養補給の時間”ではなく、
主体性・社会性・自律性が育つ場です
大人が信頼する
やりたい気持ちを保障する
公平な仕組みで環境を整える
そして、子どもが意欲を見せたときに、そっと背中を押せるように──
それが、3歳児の配膳・下膳で表した配慮の姿勢でした

コメント

タイトルとURLをコピーしました