“困った”を乗り越えるために─5歳児に体験してもらいたい日常

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5歳児年長が雨の中を散歩している。右手にはランドリー、左手にはゴミ収集車。タイトルは「“困った”を乗り越えるためにー5歳児に体験してもらいたい日常」と書いてある。 やってみたよ!こんな保育

こんにゃちは、猫月です😺

この記事を書いているのは6月半ばー
クラスも本格的に動き出して、
5歳児は、行事などで活躍する場面も増えているでしょうか
私の保育園では、夏のお祭りやプール遊びに向けて、
年長クラスが準備を進めています

ワツキ
ワツキ

みんな、もう立派なお兄さん・お姉さんですよね〜
身の回りのことはだいたい自分でできるようになってきました
でも、これから先はどんなふうに“自立”していくんでしょうか?

猫月
猫月

保育園でも”年長さん”だから、活躍も期待されているよね
就学も視野に入るから、字が書けるとか数字が読めるとかも意識するんだけど、
私たちが届けたいのは「困ったとき、自分で考えて動ける力」だと思ってるんだ

小学校に行ってからも、そしてその先の社会に出てからも、
いろいろな場面に遭遇します。その中には“困る”こともあるでしょう

そんな時に、自分の中で整理したり、誰かに頼ったりできることー
「暮らしの知恵」みたいな力を、あそびや日常の中で経験できたら…って思うんです

今日は、5歳児の保育の中で
“体験してもらいたい”日常の場面をご紹介していきます
「こんな時どうする?」を子どもが判断できるようになるため、
大人がどう配慮していくことが望ましいかを、あなたも考えてみてください

「今日は雨だから一日お部屋だね〜」
雨の日の保育は、保育室や遊戯室で過ごすのが定番ですよね

それでも、あえて傘を持って外に出ることがあります

5歳児にとって、「雨の日に歩く」というのは意外と貴重な体験
傘で視界が狭くなる、
地面が滑りやすい、
車の音が響いて聞こえる──
いつもの散歩コースが、まるで別の世界のように感じられるんです

最初は「ぬれる〜!」と大騒ぎでも、
「傘をこっちに傾けたらいいよ」
「ここに水たまりがあるよー!」と、
自分たちで考えながら歩く姿が見られます

実は、5歳児でも「傘をさしたことがない」子がいます
自転車通園だと、チャイルドシートに座ったままですし、
荷物があるから手が空くようにとレインコートでくる子もいます
こういう“何気ない”未経験が、子どもの生活にはあるのです

この体験で子どもたちは、
「天気によって気をつけることが変わる」
という暮らしの基本を、身体で覚えていきます

保育士としては“安全に”保育することが大前提ですが、
「じゃあ、その安全を子ども自身がどうやって身につけていくのか?」
という視点も大切にしたいところです

“安全”と“危険”を体験することで、
たとえば、コンクリート面は滑りやすいんだ、アスファルトを歩こうとか、
歩道の端を歩かないと、傘が通り過ぎる自転車とぶつかりそうになるんだとか、
「こういう場面でやらなきゃいけないこと」や
「やっちゃいけないこと」などを学んでいくものです

5歳児になったからこそ、経験できることもあるのです

「自分の安全は自分で守る」という意識の芽生えにつながる体験として、
あえて雨の日に散歩に出掛けています

「子ども110番の家」は、ご存知ですか?
犯罪や危険を感じたときに、子どもが助けを求めて駆け込むことができる場所です
民家や商店などが協力してくれていますね
街中でステッカーなどを見かけたことがあるかもしれません

でも、いざという時、
子ども110番が“どこにあるか”を、子どもたちは知っていますか
私たち大人もちゃんと把握しているでしょうか?
「あの辺にあった気がする…」程度では、緊急時には役に立ちません

「普段から知っておくこと」が、いざという時に子どもを守る力になる──。
そんな思いから、ある日の散歩で「子ども110番の家探し」をすることにしました

保育士が「これ、なんのマークか知ってる?」と指さしたのは、
コンビニの入口にある黄色いステッカー
すると、一人の子が
「これ、おばあちゃんちの近くにもあるよ!」と応えてくれました

“子ども110番”という存在は、
実は子どもたちにとって身近なようでいて、
「どんなときに行っていいのか」
「どうやって使うのか」は、
意外と知らないものです

そこで、「もしも道に迷ったら?」
「知らない人に声をかけられたら?」という
“ちょっと怖い”場面を想像しながら、
子どもたちと一緒に歩いてみるんです

最初はふざけながらでも、
「そしたら、ここに入って『助けてください!』って言うんでしょ?」と、
頼るべき場所・人を意識するようになっていきます

「自分でなんとかする」だけが自立じゃない
「困ったとき、誰かに頼れる」こともまた、大切な力

この体験は、小学校への通学や日常の外出の中で、
“いざという時に助けを求める”選択肢を持つことにつながっていきます

園で水遊びをしていたある日、
保育士がふと子どもたちに言いました
「ねえ、こっちの上履き、洗ってみない?」

部屋から持ち出してきたのは、保育園にある予備の上履き
子どもたちは「うわ、汚れてる〜!」と
キャッキャ言いながら、たわしでこすったり、水をかけたり
“たわし”にふれる機会も、子どもにとってはなかなかないですよね
泡立ちすぎたり、溝の汚れが全然落ちなかったり─
でも、それも大事な実体験です

5歳児になると、身の回りのことは「できるようになってきた」タイミング
でも、自分のものを「手入れする」経験は、
案外少ないかもしれません

「自分で洗ったら、気持ちいい」
「きれいになったら、ちょっと誇らしい」
そんな感覚を、遊びの中で味わってもらうことが、
「自分でやってみたいと思う気持ち」をさらに伸ばす目的です

はじめは予備の上履きからでも、
「これ、自分のもやってみたい!」という子も出てきます
家庭でも「洗いたい」と言い出したという報告を聞くこともあります

もちろん、上手に洗えることが目標じゃない
自分の持ち物に愛着を持ち、それを大事に扱うことで、
「自分のことを、自分で整える」力が少しずつ育っていく
そんな一歩としての、上履き洗い体験です

おままごとのエプロン、ぽぽちゃん人形の服、
水遊びで使ったタオルや、絵の具で汚れた雑巾──
「汚れたものは自分で洗う」という経験も大事ですよね

まず、子どもたちは“合法的に”大量の水を使えることに大喜び!
そこに石けんも加わるのですから、楽しくないわけがありません
「泡がいっぱい〜!」
「水に色がついてきた!」と
最初は遊び感覚ですが、
洗い進めるうちに、だんだん気づくことがあります

「なんか…ヌルヌルがおちない…」
「絵の具がついたとこ、ずっと赤いままだ…」

そう、絵の具も、のりも、簡単には落ちないのです
乾いた汚れはなおさらだし、
タオルの繊維に染み込んだものは手ごわいんです

そうした“思った通りにならない”体験を通して、
「毎日おうちで洗濯してくれてる人がいる」ことを、ふと想像する子もいます
もちろん、全員が「感謝」に結びつくわけではありません
でも、家でやってみたくなったり、洗濯機に興味を持ったり──
暮らしの一端を「自分ごと」としてとらえるきっかけにはなっていくのです

本音を言えば、泥汚れも体験してほしいところ
泥は乾くとカピカピになって、もっと落ちにくくなる
でもだからこそ、「汚れには種類がある」という実感が深まるとおもうんですけどね
嫌がる大人は多いだろうなぁ……

遊びを通して、生活の大事な作業に気づく
そんな経験も、5歳児年長だからこそなんじゃないかな、と思っています

保育室の一角にある、ごみ箱スペース
「燃やせるごみ」「燃やせないごみ」─
私は保育室の壁に、ゴミの分別が描かれたポスターを貼っておきます

まずは、大人が日々の生活の中でゴミの分別を行なっていく
子どもたちがその姿に気づいて、自分でもやってみようとする

破れた紙、
濡れたティッシュ、
剥がしたセロハンテープ
「これはどこに捨てるの?」と迷いながら、一つひとつ考えていくその姿
自分で出したごみの“その後”を知ることは、
片付けとはまた違った生活力につながっていきます

「燃やす?ってどうするの?」
「これは燃えないの?」
大人にとっては当たり前の感覚も、子どもたちにはすべてが新鮮
興味を持ったら、さらに深めていくチャンスにもなります

「プラスチックはリサイクルされることもあるんだよ」
「割れたコップは危ないから、新聞紙にくるんで出すんだよ」
「生ゴミは、肥料にして野菜の栄養になるんだよ」
──そうした会話が、日々の中で生まれていきます

大事なのは、“ごみを捨てる”は“終わり”じゃないと知ること
ごみは「捨てたあとに、どこへ行くのか?」という視点を持つことで、
子どもたちの“生活の中のしくみ”へのまなざしが育ちます

最近は”SDGs”という言葉もあるので、
子どもたちに「無駄遣いをさせない」という大人の意識もありますね

ただ、子どもの中で「もったいない」って言葉がしっくりくるようになるのも、
きっとこういう体験を重ねてから、なんですよね

“ゴミを捨てる”という所作を身につける
分別することから「なぜ?」が生まれる
日々の小さな体験なんですけれど、
それが後々の大きな意識につながっていくのだと思っています

雨の日に傘を差して歩くこと
困ったときに、頼れる場所を知ること
自分の上履きを洗ってみたり、汚れの落ちにくさに気づいたり
そして、ごみを分けて捨てることの意味を、ほんの少しだけ考えてみること

それぞれは、ごくささやかな日常の一コマです
でも、そこには“ちょっとした不便”や“どうしよう?”があって、
その先に「自分で考えて動いてみる」力が育っていきます

私たちは、小学校の先取りをしているわけではありません
生活の中で出会う「困った」「やってみたい」を通じて、
子どもたちが「社会の一員として、自分の暮らしをつくっていく力」の土台を育んでいるのだと思います

自立って、大きなことじゃなくて、
“目の前のことに、自分の力で関わってみる”の連続なんですね

「学校へ行っても困らないように」と保育をしていては、
保育園は小学校の予備校になてしまいますからね
小学校での課題は、あくまで小学校で解決を図るものです
そこの線引きはしっかりしつつ、
暮らしの力=“大人になってからも役立つ力”を
子どもたちには獲得してもらいたいと思っています

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