こんにゃちは、猫月だんくるおすてうすです。
今回も、酒井沙弥香さんとの共同企画
【絵本の語り場 ~絵本は、ええ本~】で紹介した
絵本のレビューを寄せたいと思います。
【絵本の語り場 ~絵本は、ええ本~】は、
みんなで絵本についてワイワイ喋ろう!というものです。
毎月一回、
テーマに沿った絵本を持ち寄って
その絵本の魅力
選んだ基準
どんな読み方・提供の仕方をするのか
といったことを楽しむ時間にしてきました。
ということで、
第2回 絵本の語り場
で私が紹介した絵本は、こちらです。
「おいしいおと」
文:三宮麻由子
絵:ふくしまあきえ
版:福音館書店
あらすじ
「いただきまーす」
おいしいご飯を食べよう。
春巻、
ほうれん草、
ごはん、
みそ汁、
ウインナ、
かぼちゃ、
レタス、
プチトマトに
デザート。
おいしい物を食べると、
どんな音がするのかな?
おいしいおと???
この絵本を初めて読むと、
その表現に「???」と感じると思います。
例えば春巻の、
カコッ ホッ カル カル カル カル カル
という音。
春巻を噛んだ時の音を、
あなたならどう表現しますか?
ほうれん草のおひたしなら?
ほかほかのごはんは?
みそ汁のわかめは?
自分なりに、
食べ物を口に入れた時の音を
表現してみてください。
Don`t think. FEEL!
「考えるな、感じろ!」は、
『燃えよドラゴン』のセリフですが(笑)
この絵本の中で表現されている
「おいしいおと」は、
耳の外から聞いた音ではなく、
自分の内から聞いた音だそうです。
文を書いている三宮麻由子さんは、
全盲のエッセイストです。
絵本のどこにもそんな紹介はないので、
読者は知る由もない話です。
ですが、耳で情報を得ることに特化すると、
同じ世界でも感じる物が違うのかも知れません。
食べ物を口に入れた時の音は、
歯から骨を伝わって、
耳へと届きます。
その音に純粋に耳を澄ますと、
おそらく聞こえる音が変わるはずです。
例えるなら、
自分の声を録音して聞くと、
違和感を覚えますよね。
あれは、自分の内から聞こえる音声と、
耳の外から聞こえる音声に違いがあるからです。
作者の事情はともあれ、
「おいしいおと」に耳を傾けると、
実は自分の思い込みがあることを自覚するかも知れません。
音を”表現する”
咀嚼音を字におこした三宮さんには、敬意を表するばかりです。
ですが、さらにその文字を音として読み聞かせる時は、
その困難さに直面します。
ただ読んだだけでは、子どもたちは共感できないからです。
それこそ、”表現”しないと、
相手には「おいしいおと」として伝わりません。
話は変わりますが、
動物の鳴き声を表現する時、
あなたならどう表現しますか?
猫の鳴き声は?
犬なら何と鳴く?
牛は?ひつじは?
ライオンと、クマの鳴き声の違いは?
正解はありませんが、
「にゃー」と文字通りに鳴く猫はいませんよね。
犬だって、小型犬と大型犬では違うはずです。
それこそ、
うさぎは「ピョンピョン」なんて鳴きませんし、
タヌキは「ポンポコポン」ではないですよね。
セミの鳴き声なんてどうですか?
ついつい「ミーンミンミン」と
ミンミンゼミになっていませんか?
夏に盛んに鳴いているのは、
関東だったらアブラゼミだと思いますが、
アブラゼミの鳴き声を表現できますか?
(実は、アブラゼミは地域によって鳴き声が異なるそうです)
そう。
音を実際に表現するとなると、とても困難なのです。
ただ、大人の思い込みで、
子どもの感性にフィルターを掛けないようには、気を付けたいですね。
ともすれば、それは”ウソ”になりかねませんから。
絵本は、感性のきっかけ
この絵本を読んで、
実際に食べる音がどんなだったか、知りたくなりませんか?
子どもたちが、咀嚼の際に耳を塞いだら――
それは、実験が始まったのだと思います。
自分の耳で、本当はどんな音がするのか、
探求したくなったのだと思います。
大人からすると、
「行儀が悪い」とたしなめたくなるかも知れませんが……
願わくば、小さな研究者の実験を見守っていただけたら、と願います。
更に願うとすれば、一緒にその音の研究に、
大人も加わっていただけると嬉しいです。
生活の中で、最も身近な物の一つ“たべもの”。
毎日口にする物を、親子で一緒に別の角度から見てみませんか?
絵本紹介
三宮麻由子さんが“風”を表現すると、こう感じるそうです。
たべものの絵本も紹介します。
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